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説明した方が親切かな、と思った諸注意みたいなもの。


・史実をベースにしたねつ造未来の銀高。もしも高杉が四境戦争以降も生き延びたなら。
・原作の上様は死亡。新将軍は喜喜(のぶのぶ)。道州制。明治まで藩庁と旧藩主が地方行政中。
・開始直後高杉27歳。桂、銀さんも似たり寄ったり。
・攘夷戦争後花火の時に再会。紅桜でちょこっと。その後一、二度会ってますがほとんど交流のない銀高。←なのにばっちり沖田君にみられてる。駄目じゃん。
・色んな人を書こうと思ったので銀高以外のキャラも沢山。
・わざと書かなかったキャラ、天人。神威。天導衆。
・都合上入らなかったキャラ、西郷・松平ぁぁぁぁぁ!
・原作にいない史実キャラも明治の都合上うろうろ出ています。
・総督至上。
・糖分は足りない。これから補完します。


シリアスに見せかけたツンデレのメロドラマでよろしければどうぞお楽しみください。

梅花凋落01
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 きょうびの鬼兵隊総督、というのは座敷に転がって酒飲みながら日長一日ぷらぷらしていると思われがちだが、存外そうでもなかった。
 確かに転がって裸足の足をぷらぷらさせて煙草をのみつつ昼酒したり、そのまま日向で午睡をしていることもある。攘夷戦争の頃よりは格段にものぐさでだらしなく怠惰に過ごしているとか(本人談)。
 が、この総督は気がつけば歌を歌い、漢詩を書き付け、書物を読み、地図を広げて何やら立案し、実行に移す算段を黙考していたりする。
 そういうわけで、一人遊びが上手な総督があんまり退屈している所を万斉は見たことがない。
 今日も潜伏先にやってくると総督の部屋に様々な紙を散乱させたまま、やっていた作業に疲れたのか、隅っこで窓の外などを眺めていた。
「邪魔するでござる」
 結界のように広げられた紙片を片付けない事には総督の元にさえ近づけない万斉は足場を確保するため、順々に重ね始めた。

 魚驚釣餌去 鳥見矢弓飛
 反復人情事 我掌知此機…

 その一つに目をやれば、その書き付けがまた巧いもので、書も詩も立派な趣味人としてやっていけるほどだった。何をやらせてもいっぱしの、才気煥発な男なのだ。
 だが根を詰めすぎていた。
 もっと怠惰に緩やかに過ごしていてもらったほうが安心なのだが。
「何か用か?」
「何も。顔を見せにきたでござる」
 正確に言えば我らが総督の麗しのご尊顔を拝しにきたのだ。
 今日も晋助は指先まで白く、頬だけが上気して赤かった。
「ふうん」
「詩作に飽いたのなら、気晴らしに三味線でもどうでござる。最近はとんとやっておらぬであろう? 何か理由があるでござるか?」
「…。あれなぁ…」
 晋助はものうく答えた。
「気が乗らぬようでござるな」
「最近じゃ三味線くれぇで獣の唸りは打ち消せねぇのさ。日増しに大きくなっていきやがる。…それに音ってのは弾けば内心がだだ漏れんだろうが」
 聞く奴が聞けば分かるものだ。そしてお前は分かる奴だろうがと、晋助は万斉をちらりと見上げた。
 しかし気詰まりなのは本当なのだろう。
 考える事に草臥れたのは。
 晋助はほうっとため息をつくと、億劫そうに動いた。
「でもまあ、やってみるか。後で感想を聞かせろよ」
 晋助はいざって小さく畳まれていた携帯用の三味線を手に取った。順々に組み立てて音を合わせると、バチを動かし始めた。
 音はびいいんと重く乾いて響き、万斉の胸を抉るように轟いた。
 晋助は大変な弾き手だ。そもそも技巧ももの凄いが、そればかりではない。
 だが今日に限っては弾きづらそうに何遍か音を外した。いいや、音が取れないのだ。
気怠そうだがいつもはもっと楽しげな音を出すのに、眉間に皺を寄せている。
 晋助の言うように獣の唸りが強すぎて、三味線の音が聞こえないのかもしれない。万斉には獣の唸りは聞こえない。だが、晋助の胸が轟々と鳴るのは離れていても良く聞こえた。
 晋助は転調させて、曲の解釈に添うように弾くのをやめた。その胸の異音を打ち消すように、強く強くバチを動かした。
 未だ果たされぬ誓いと晋助の内心。志、彼の魂というべきもの、その情念。
 狂気で。
 真昼の穏やかな午後が黒く侵されて行く。
 美しく凄絶な修羅の音がしばらく響いた。
「どうよ」
 手遊び、という範囲を遠く逸脱している、その音。魂の叫びに万斉は頷いた。
「あい分かった」
「何が?」
 三味線を弾く事で何かを発散させ、少し表情の戻った晋助は怪訝そうに問うた。
「おぬしの願う通り、見事戦いの火蓋を切ってみせるでござる」
 近々に。
「…くくく、そうか俺は戦場に焦がれているのか。ああ、そうだな…その通りに違いない…」
 晋助は熱を帯びた潤んだ目で、小さな肩をふるわせて、暫くおかしそうに笑っていた。
 三味線は確かに目的通り気晴らしにはなったようだ。
 だが、晋助を止まらせる事はできないことを万斉は同時に悟った。もはやとどめるをえず。
(残された時は少ない…晋助自身が覚悟しているように)
 狂気が晋助の心を壊すのが先か、胸の轟音が体を壊すのが先か、だがその前に。必ずやその前に、晋助の宿願を果たさせてみせよう。
 そのために万斉は、いや鬼兵隊はあるのだ。
 万斉はそのまま、武市を探しに行った。
 時機は来ている。すぐそこまで。鬼兵隊はそれを掻き混ぜ早めねばならない。
 飛ぶ鳥が落ちるように、晋助は遠からず死ぬ。
 晋助は病んでいた。










続くことになりました
 天人がやってきて、開国を迫り、幕府は不平等条約を結ばされた。
 それはそれとして、市井の民草は笑って泣いて今まで変わりなく日々の営みを続けていた。なんて強くたくましい。
そんな人々の間に紛れて、大江戸かぶき町に銀時が住み着いてもう何年にもなる。
「こんにちわー。やっとトイレットペーパー買えましたよ」
そうこぼしながら新八が帰ってきた。
「おう、新八。これで安心してケツが拭けるな。良かった良かった」
 近頃大江戸の物価は驚くほど上がるばかりだ。舶来の文物を購入するための金がどんどんと流失の一途を遂げているからだという。右肩上がりの物価上昇。この未曾有のインフレに貧乏人はもうついていけなくなっている。
 その上、雪火病という伝染病が大流行して人心不安に拍車をかけている。
 新八もマスクをして予防に努めていた。
「でもなー、新八。あんま出歩かねーほうがいいぞ。どこでうつるかわかんねーんだから」
 雪が燃えるほどの熱を発する、ということからつけられたこの熱病は元は地球にはないものだった。これもまた舶来のものだ。どっかの天人の風土病らしい。そいつらには特効薬もあってたいしたことのない病気でも、人間には違った。
 天人の特効薬は人間には強すぎるのだ。その上適合しない。
天人の技術は地球人にとっては完全にオーバーテクノロジーで、我がものとするにはまだ何年もかかるそうだ。人間が人間のための薬を作り、人類がこの病を克服するにはまだまだ時間がかかるということだ。
 何のための開国。
 毎日ばたばたと人は死んで行き、残された人々は悲しみと貧困に喘いでいる。
 開国は人を豊かにするのではなかったのか。日々の生活は便利に、全てがよくなるのでは。だが実際には逆へと向かっていた。一体どこで間違ってしまったのだろう。かつて頻繁に感じた既視感が再び銀時を襲い始めていた。
「まあそうなんですけど」
 新八はトイレットペーパーを片付けながら眼鏡をずりあげた。
「大丈夫ですよ。銀さんが坂本さんから薬貰ってくれたじゃないですか」
 本当の初期の段階、まだ体力のあるうちなら天人用の特効薬も効く。ただし代価は非常に高額の上、強い副作用がでる。しかしそれも完全に発症してしまえば効き目はほどんどなく、生存率は五割を切った。
ただの風邪だと思っていた者たちが次々と死んでやっと発覚したのだった。
 そして気づいた時には手の施しようもなく遅く、雪火はそこここに蔓延していた。
「飲まずにすめばそれにこしたことはねぇんだ。買い物なんかは俺や神楽がやるからよ。おまえはあんま、動きまわんなや」
 薬の副作用は何度も長時間に渡る昏睡状態を引き起こす。熱は下がっても、そのまま目覚めなくなる者もいた。だから罹らずにすむならそれにこしたことはないのだ。 神楽は夜兎だ。だからいい。
 そして銀時にはどうやら抗体があるらしい。
 反応検査で分かった事だ。しかし新八は違う。
 抗体を持つ者は十人に一人の確率だった。
 医療機関はそうした人の研究も進めていて、銀時も検査の上、随分血を抜かれた。
 そればかりではない。こんな時局にあって雪火に罹らない人間は貴重で、銀時は万事屋として、不眠不休で働いていた。
 それは主に発病者を隔離病棟へ移したり、死体を片付けて葬式を出してやったり、或いは買い物もできずに閉じこもっている人々への代行サービスであったり様々だったが。
 今はほんの仮眠としてこの事務所に戻ってきていたのだ。一時間ほどは眠れただろうか。神楽はまだ押し入れで落ちている事だろう。
 同じように働く事ができない新八はせめて家の中のことをしようとしてくれているのだ。それは分かる。分かるが、死なれては困る。
 銀時が眠い目でじっと見ていると新八はようやく頷いた。充分気をつけると。
「分かりましたよ」
「おう、悪いな。それより飯でも作ってくれ」
「もちろん」
 そんなこんなで今大江戸は混乱の極だ。
 そして、この不安と混乱、幕府要人暗殺、将軍雪火による病没、新将軍への代替わり、ヤケになった者たちの犯罪の多発、テロの鎮圧などの政情不安が天人と幕府への悪感情となって吹き出そうとしている。天人排斥、それとともに倒幕運動が火を噴くのではないかと、銀時は案じていた。
 しかし、銀時の心配は杞憂には終わらなかった。
 数日後、高杉晋助起つ、の報が入った。

(高杉…!)

 鬼兵隊挙兵。
 戦火は瞬く間に全国に飛び火し、それに呼応して倒幕の諸隊が次々と雪崩を打って結成、武装蜂起した。
 高杉は過激派テロリストの皮膜を脱ぎ捨てて、攘夷戦争の英雄、常勝の戦争屋として再び立ったのだ。
 高杉を危険視していた幕府も当然黙ってはいない。
 新将軍喜喜はすぐさま京都へ赴いた。幕軍が動員され、将軍護衛のため武装警察真撰組もそれに編入されるという。
「マジかよ」
 銀時が屯所へ行った時にはすでにもぬけの殻に近かった。
 戦争なんか、やってる場合か。
 今幕府がしなくてはならないことは雪火の沈静化、それしかないはずなのに。あの野辺送りの火が目に入らないのか。
 警察がいなくなったら誰が大江戸市中を守るのだ。ただでさえ犯罪が激化しているのに。銀時は静まり返った屯所に唖然とした。
 高杉が挙兵するのは分かる。
 ずっとやりたがっていたことだ。
 この雪火の大流行は、高杉にとっては千載一遇の機会に違いない。最後の機会だ。これを逃せば次はない、そう思い定めているに違いない。
(なんてひどい展開だ)
 銀時は目眩を感じる。
 雪火さえなければ。
 そして幕府や、高杉を取り巻く人間が、誰もまともに相手なんかしなければ、あいつの命をかけた喧嘩は独り相撲に終わったはずなのに。
 銀時は残酷にもそう思った。
 しかし現実は希望とはかけ離れていた。
 世の中には思った以上にバカが多い。幕府然り。江戸を空にした真撰組然り。高杉というカリスマに煽動される者然り。
「旦那」
「沖田君、お前のこってたのか」
「この体じゃねぇ」
 完全にもぬけの殻、ではなかったのは沖田がいたからだった。
 沖田は縁側に面した一室で横たわっていた。障子は開け放たれていたので、銀時がいるのが分かったのだろう。薄い、透明な幕の中に布団をしかれて、沖田はこちらを見ていた。
 空気感染を遮断させる幕。沖田は雪火病に罹患していたのだ。
「お前、」
「こんな時に情けねぇ。薬のせいで体が動きやせんのさぁ」
 それだけ言うと、沖田はすうっと意識を失った。
 もう何度も見た副作用だ。
 服用した者は何度も長時間の昏睡状態に陥る。日に二三度目を覚ますが、そのまま死ぬ者も多い。生存率は五割を切る。
 その五割に、沖田は入れるのか?
 どうして、こんなことに。

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銀ちゃん編。明治まで突っ走ります。
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