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花びらが散っていた。
夜の桜だ。
何故そう思ったのか。それはきっと周りは暗いのに月の光か電灯のせいでか、浮き上がるように仄かな光がふりそそいでいたからだ。真冬の太陽だってもっと強い。
その白く淡い光の中で銀時は高杉に刺される夢をみた。
そう夢だ。
だがその夢に何度となく、責められる。
そんなある日、仕事もなく、神楽も公園に遊びにいってすることもなく、もう何回目か分からないくらい熟読した今週のジャンプをソファーでぱらぱらめくっているうちに寝てしまった銀時は、やっぱり愛しのあの子に、どすっと体重の乗った刀に差し貫かれて飛び起きた。
「何だ騒々しい」
「何っておれの台詞だよ」
ヅラが、向かいのソファーに座って茶を啜っていた。あれだ。勝手知ったる他人の家、とばかりに勝手に茶を煎れた訳だ。その間気付かないおれってやっぱ相当なまってんな、いいけど別によー。と銀時は思いながらいった。
銀時が客扱いしないから自分で煎れているのだとヅラはいうのだが、飲まないという選択肢はないんだろうか。全く。遠慮って言葉を知っているか? と万年金欠な万事屋銀ちゃんはたまにヅラの襟首つかんでがくがくしてやりたくなる。
「何しに来てんだ? 仕事か? それならそれなりの誠意をだな」
つまり神楽と新八と三人で喫茶店でパッフェーでも奢れということだ。
「いや、今日はリーダーがな」
「神楽?」
「おまえの寝相が近頃、大層面白いというから見に来たのだ」
隙か!
しかしそうか。それはあれなりに神楽は心配したんだろうなとは思う。で、桂が来たという事は攘夷の頃の夢でも見てると思ったのかね。戦争行った奴は多かれ少なかれ心を壊して帰ってくる。酷い敗戦だったなら特に。魘されるなんて可愛い方だろう。
あれもあの頃の夢を見たりしてるんだろうか。そうでなければ不公平な気がする。
(ずっとおれの夢でも見てればいいのに)
「はあ」
そう思いながら銀時は曖昧な相槌を打った。
神楽には悪いが悲惨な戦争体験の夢ではなかった。元々銀時は攘夷の夢など見ない。そりゃあたまにはあの頃の高杉と体を繋げたえろい夜を見たいと思わないでもなかったけれど、生来の図太さからか、ご褒美もなく、魘される事もなかった。
「で?」
「ん?」
でも何でか今は高杉にぶっさされている夢を見ている。夢の中であえるのは嬉しいけどどういうことなの。鍛冶の兄妹の件では、高杉の影がちらちらしていた。あの頃に見たのは分かる。実際腹が痛かったしね! でも紅桜の一件も終わった。それでも度々あの夢を見ているのは高杉に未練があるせいか。
(まあ、未練はあるよね。実際ね)
次会った時はぶったぎるとか言いましたけどもぉぉぉぉ。ぶった切った後、拉致監禁の末めくるめく調教とか思ってる時点でそれは未練です。どうでもいいよ、めんどくせぇよ、とかいいながら往生際が悪くて、諦めが悪くて、しつこい男なんですー。
で、そういうのウザイ! とか思われてぶった切られてんのかしら。晋ちゃんだっていつまでも世界をぶっ壊すとか言ってる中二の粘着質なのにね!
それとも流石にちょこっとにしても斬ったりなんて可哀想だとか罪悪感もってんのかね。
それともそれとも。…高杉にセクハラしては散々に踏みにじられた思い出が凝縮されているのだろうか。
「高杉とあはんうふんしてる夢か?」
「ちげーよ! そんな夢だったら金払ってでも見たいわ」
「なんだ、貴様の妄想もまだまだだな」
とヅラに偉そうにいわれてちょっとむかついた。ヅラの癖に!
それにしても、そうですか。おまえは気に入った人妻のあはんうふんの夢を自在に見れるってか。流石ヅラ、ちょっ、羨ましくなんてないんだからねっ。
「で、真面目な話どうなんだ」
軽い鍔迫り合いの応酬の後、ずばっと切り込まれた。すっかりヅラのペースだなと思いながら面倒くさくなってしまった銀時は夢について白状する。
「夜な夜な晋ちゃんに腹刺されちゃってぇ」
「うむ。月夜ばかりではないからな、いつかやられるんじゃないかと思っていたぞ」
そのうち正夢にならんよう気をつけろ。とヅラは言う。高杉の恨みはさぞ深かろうと。恨み? だと?
「ひど!」
「それくらいのことはしてるだろう」
「同じくらい返り討ちにあってるけど! ていうかどっちかというとおれの方がフルボッコにされてない?」
「おまえは誤摩化すのがうまいからな。言ってる事の逆が深層だろう」
お前高杉になにをした。
そんな目にあっても不思議ではないと思ってるということだ。と。
それって何?
どういうこと?
おれが高杉に何をしたって?
「…何もしてねぇよ」
「その割に歯切れが悪い」
「しなかったんだよ、何も」
どっと、その時になってはじめて、銀時は深層から罪悪感が競り上がってくるのを感じた。
銀時はおれを戦場に置き去りにしたとか、一番苦しい時に一人にしたとかそんなことを負い目に感じたり、裏切っただとか思っているようだった。
絶縁されたと理解していたのだが、ある時ヅラが忍び込んで来てそんなようなことをいった。
銀時はおまえに対して何もせずに逃げたと思っていると。
「それでおまえ銀時を恨んでいるのか?」
「あ?」
あの戦争末期。心を真っ黒に塗りつぶしたのは銀時への恨みではない。部下を殺した幕府への怒りだ。そして先生を殺した者への憎しみ。
確かにそんなものをのさばらせたままでいるどうしようもない世界へ転化されているが、そのとき銀時はとうに去った後だった。
大体戦いを放棄した者は銀時一人だけではない。
「憎ったらしいけどな。それは銀時に限る事じゃねぇよ。そのうちてめぇら全員ぶっ壊してやんよ」
「うむ。おまえは銀時には心が広いからな。そうだと思った」
心が広いだと?
気宇壮大とは良く言われたがそんなことをいわれたのは初めてだ。一体全体なんなのだ。
「ああ? おまえはわざわざやってきて、何がしてぇんだよ?」
高杉はやや呆れていった。
「おれのことはお仲人さんと呼んでくれて構わない」
仲人って何だ。
おれと銀時の縁を取り持とうとでもいうつもりか。余計な世話だ。放っとけ!
「おい侵入者だ、つまみ出せ」
「まじっすか! すみません、晋助さま。今片付けるっすよ」
と、一連の騒ぎの後追い出されたのだが。本当に何がしたかったのか、昔っからさっぱりわからん。
(そもそも何だったかな。銀時が)
高杉に刺される夢を見ている、とかか。
莫迦だな、と思う。
(元々あいつぁ、救い様のねぇ莫迦だったが何だって? おれがねちねちあいつを恨んでるとでも?)
そんなことは全然なかった。
高杉は一人ではなかったし、銀時が離れていくことは分かっていたことだった。そもそも銀時が戦う理由なんて説明できるほど確固たるものなんてなかったのだ。その時々に流されてやっていたことだった。
先生が亡くなってすることもなく、居場所もないような気になって攘夷に便乗したのだ。戦場にくれば仲間ができる。旧知の桂は最初から一緒だったし、後に高杉も合流したし、同じ釜の飯を食って知り合った仲間が死ぬのはつらいから、守ってやりたいとか、そんなもので、それだって全滅するようなこともあったから、戦い自体に倦んでいくのは分かりきったことだった。そもそも居場所なんて戦場じゃなくたって、銀時ならすぐに見つかったろう。
太々しいから殺しても死なないし、ゴキブリ並みにどこででも生きていける。銀時は生きるべきだと思ったし、生きていくのが似合いでもあった。
だから別に良かった。
戦場で死んで伝説になるよりもよっぽど。
手足をふん縛って無理に止めおくことはできただろうし、高杉が懇願すればあと少しばかりの猶予は得られた。けれども高杉はそうしなかった。
それだけのことだ。
高杉が銀時を去ることを止めなかったように、銀時も高杉が戦場に残ることを止めなかった。お互いがお互いの意見を尊重した。そういうことだ。
もしかしたら、銀時は高杉を連れて行きたかったのかもしれない。けれどもどこへ落ち着くともしれないのに連れ出すだけの強固な理由をやはり銀時は持ち得なかった。その前に諦めた。
銀時の後悔は結局の所、その諦めに起因するのかもしれない。
高杉の意思を、銀時と生きるよりも戦い続けて不朽を成すという誓いを覆すことができなかったこと、そうしようと提案し、努める前に投げ出したこと、そんなところでは。
だからといって結果は変わらなかっただろう、と思う。
今更悩んだって仕方がないのに。
どうしたって流れていった時間は戻らない。
高杉は決して折れなかっただろう自分を知っている。銀時を諦める方が簡単だった。
実際に銀時の愛情を裏切ったのは高杉だったわけだ。
仕方がない。
高杉はそういう人間だった。
それに初恋というものは叶わないものだ。そう思っていた。頑に。
多分、いつか銀時に袖にされて、捨てられ、傷つくのが嫌だったのだろう。
実際銀時は別れの言葉一つ口には出さず、どっちかというと遠く離れていても、晋ちゃんはおれの恋人、絶対とか厚かましいことを考えていたのだった。
銀時が恐れていたことは高杉が死ぬこと、ただそれだけだった。
銀時とはいつか別れるときがくる、主義主張がまるであわない、価値観の相違だ、そう思っていた高杉を他所に、生きてさえいればもう他人には戻らせない。高杉とは逆に銀時はそう決意していた。
高杉はまだ銀時の独占欲と束縛を甘く見ていたのだ。
どうして分かるだろう。
お前なら幾らでも穏当で真っ当な連れ合いを選べただろうに。
どうしてそんなにおれが好きなのか。そんな子供みたいなこと、今までもこれからも絶対に聞いたりはしないが、理解できない。
どうしてお前を好きになってしまったのか、自分の心もわからないのに。
理解できない物を排除できればどんなにか楽だったろう。
恨みではない。
はじめて銀時を見たときから高杉は今に至るまでずっと困惑しているのだ。
夜の桜だ。
何故そう思ったのか。それはきっと周りは暗いのに月の光か電灯のせいでか、浮き上がるように仄かな光がふりそそいでいたからだ。真冬の太陽だってもっと強い。
その白く淡い光の中で銀時は高杉に刺される夢をみた。
そう夢だ。
だがその夢に何度となく、責められる。
そんなある日、仕事もなく、神楽も公園に遊びにいってすることもなく、もう何回目か分からないくらい熟読した今週のジャンプをソファーでぱらぱらめくっているうちに寝てしまった銀時は、やっぱり愛しのあの子に、どすっと体重の乗った刀に差し貫かれて飛び起きた。
「何だ騒々しい」
「何っておれの台詞だよ」
ヅラが、向かいのソファーに座って茶を啜っていた。あれだ。勝手知ったる他人の家、とばかりに勝手に茶を煎れた訳だ。その間気付かないおれってやっぱ相当なまってんな、いいけど別によー。と銀時は思いながらいった。
銀時が客扱いしないから自分で煎れているのだとヅラはいうのだが、飲まないという選択肢はないんだろうか。全く。遠慮って言葉を知っているか? と万年金欠な万事屋銀ちゃんはたまにヅラの襟首つかんでがくがくしてやりたくなる。
「何しに来てんだ? 仕事か? それならそれなりの誠意をだな」
つまり神楽と新八と三人で喫茶店でパッフェーでも奢れということだ。
「いや、今日はリーダーがな」
「神楽?」
「おまえの寝相が近頃、大層面白いというから見に来たのだ」
隙か!
しかしそうか。それはあれなりに神楽は心配したんだろうなとは思う。で、桂が来たという事は攘夷の頃の夢でも見てると思ったのかね。戦争行った奴は多かれ少なかれ心を壊して帰ってくる。酷い敗戦だったなら特に。魘されるなんて可愛い方だろう。
あれもあの頃の夢を見たりしてるんだろうか。そうでなければ不公平な気がする。
(ずっとおれの夢でも見てればいいのに)
「はあ」
そう思いながら銀時は曖昧な相槌を打った。
神楽には悪いが悲惨な戦争体験の夢ではなかった。元々銀時は攘夷の夢など見ない。そりゃあたまにはあの頃の高杉と体を繋げたえろい夜を見たいと思わないでもなかったけれど、生来の図太さからか、ご褒美もなく、魘される事もなかった。
「で?」
「ん?」
でも何でか今は高杉にぶっさされている夢を見ている。夢の中であえるのは嬉しいけどどういうことなの。鍛冶の兄妹の件では、高杉の影がちらちらしていた。あの頃に見たのは分かる。実際腹が痛かったしね! でも紅桜の一件も終わった。それでも度々あの夢を見ているのは高杉に未練があるせいか。
(まあ、未練はあるよね。実際ね)
次会った時はぶったぎるとか言いましたけどもぉぉぉぉ。ぶった切った後、拉致監禁の末めくるめく調教とか思ってる時点でそれは未練です。どうでもいいよ、めんどくせぇよ、とかいいながら往生際が悪くて、諦めが悪くて、しつこい男なんですー。
で、そういうのウザイ! とか思われてぶった切られてんのかしら。晋ちゃんだっていつまでも世界をぶっ壊すとか言ってる中二の粘着質なのにね!
それとも流石にちょこっとにしても斬ったりなんて可哀想だとか罪悪感もってんのかね。
それともそれとも。…高杉にセクハラしては散々に踏みにじられた思い出が凝縮されているのだろうか。
「高杉とあはんうふんしてる夢か?」
「ちげーよ! そんな夢だったら金払ってでも見たいわ」
「なんだ、貴様の妄想もまだまだだな」
とヅラに偉そうにいわれてちょっとむかついた。ヅラの癖に!
それにしても、そうですか。おまえは気に入った人妻のあはんうふんの夢を自在に見れるってか。流石ヅラ、ちょっ、羨ましくなんてないんだからねっ。
「で、真面目な話どうなんだ」
軽い鍔迫り合いの応酬の後、ずばっと切り込まれた。すっかりヅラのペースだなと思いながら面倒くさくなってしまった銀時は夢について白状する。
「夜な夜な晋ちゃんに腹刺されちゃってぇ」
「うむ。月夜ばかりではないからな、いつかやられるんじゃないかと思っていたぞ」
そのうち正夢にならんよう気をつけろ。とヅラは言う。高杉の恨みはさぞ深かろうと。恨み? だと?
「ひど!」
「それくらいのことはしてるだろう」
「同じくらい返り討ちにあってるけど! ていうかどっちかというとおれの方がフルボッコにされてない?」
「おまえは誤摩化すのがうまいからな。言ってる事の逆が深層だろう」
お前高杉になにをした。
そんな目にあっても不思議ではないと思ってるということだ。と。
それって何?
どういうこと?
おれが高杉に何をしたって?
「…何もしてねぇよ」
「その割に歯切れが悪い」
「しなかったんだよ、何も」
どっと、その時になってはじめて、銀時は深層から罪悪感が競り上がってくるのを感じた。
銀時はおれを戦場に置き去りにしたとか、一番苦しい時に一人にしたとかそんなことを負い目に感じたり、裏切っただとか思っているようだった。
絶縁されたと理解していたのだが、ある時ヅラが忍び込んで来てそんなようなことをいった。
銀時はおまえに対して何もせずに逃げたと思っていると。
「それでおまえ銀時を恨んでいるのか?」
「あ?」
あの戦争末期。心を真っ黒に塗りつぶしたのは銀時への恨みではない。部下を殺した幕府への怒りだ。そして先生を殺した者への憎しみ。
確かにそんなものをのさばらせたままでいるどうしようもない世界へ転化されているが、そのとき銀時はとうに去った後だった。
大体戦いを放棄した者は銀時一人だけではない。
「憎ったらしいけどな。それは銀時に限る事じゃねぇよ。そのうちてめぇら全員ぶっ壊してやんよ」
「うむ。おまえは銀時には心が広いからな。そうだと思った」
心が広いだと?
気宇壮大とは良く言われたがそんなことをいわれたのは初めてだ。一体全体なんなのだ。
「ああ? おまえはわざわざやってきて、何がしてぇんだよ?」
高杉はやや呆れていった。
「おれのことはお仲人さんと呼んでくれて構わない」
仲人って何だ。
おれと銀時の縁を取り持とうとでもいうつもりか。余計な世話だ。放っとけ!
「おい侵入者だ、つまみ出せ」
「まじっすか! すみません、晋助さま。今片付けるっすよ」
と、一連の騒ぎの後追い出されたのだが。本当に何がしたかったのか、昔っからさっぱりわからん。
(そもそも何だったかな。銀時が)
高杉に刺される夢を見ている、とかか。
莫迦だな、と思う。
(元々あいつぁ、救い様のねぇ莫迦だったが何だって? おれがねちねちあいつを恨んでるとでも?)
そんなことは全然なかった。
高杉は一人ではなかったし、銀時が離れていくことは分かっていたことだった。そもそも銀時が戦う理由なんて説明できるほど確固たるものなんてなかったのだ。その時々に流されてやっていたことだった。
先生が亡くなってすることもなく、居場所もないような気になって攘夷に便乗したのだ。戦場にくれば仲間ができる。旧知の桂は最初から一緒だったし、後に高杉も合流したし、同じ釜の飯を食って知り合った仲間が死ぬのはつらいから、守ってやりたいとか、そんなもので、それだって全滅するようなこともあったから、戦い自体に倦んでいくのは分かりきったことだった。そもそも居場所なんて戦場じゃなくたって、銀時ならすぐに見つかったろう。
太々しいから殺しても死なないし、ゴキブリ並みにどこででも生きていける。銀時は生きるべきだと思ったし、生きていくのが似合いでもあった。
だから別に良かった。
戦場で死んで伝説になるよりもよっぽど。
手足をふん縛って無理に止めおくことはできただろうし、高杉が懇願すればあと少しばかりの猶予は得られた。けれども高杉はそうしなかった。
それだけのことだ。
高杉が銀時を去ることを止めなかったように、銀時も高杉が戦場に残ることを止めなかった。お互いがお互いの意見を尊重した。そういうことだ。
もしかしたら、銀時は高杉を連れて行きたかったのかもしれない。けれどもどこへ落ち着くともしれないのに連れ出すだけの強固な理由をやはり銀時は持ち得なかった。その前に諦めた。
銀時の後悔は結局の所、その諦めに起因するのかもしれない。
高杉の意思を、銀時と生きるよりも戦い続けて不朽を成すという誓いを覆すことができなかったこと、そうしようと提案し、努める前に投げ出したこと、そんなところでは。
だからといって結果は変わらなかっただろう、と思う。
今更悩んだって仕方がないのに。
どうしたって流れていった時間は戻らない。
高杉は決して折れなかっただろう自分を知っている。銀時を諦める方が簡単だった。
実際に銀時の愛情を裏切ったのは高杉だったわけだ。
仕方がない。
高杉はそういう人間だった。
それに初恋というものは叶わないものだ。そう思っていた。頑に。
多分、いつか銀時に袖にされて、捨てられ、傷つくのが嫌だったのだろう。
実際銀時は別れの言葉一つ口には出さず、どっちかというと遠く離れていても、晋ちゃんはおれの恋人、絶対とか厚かましいことを考えていたのだった。
銀時が恐れていたことは高杉が死ぬこと、ただそれだけだった。
銀時とはいつか別れるときがくる、主義主張がまるであわない、価値観の相違だ、そう思っていた高杉を他所に、生きてさえいればもう他人には戻らせない。高杉とは逆に銀時はそう決意していた。
高杉はまだ銀時の独占欲と束縛を甘く見ていたのだ。
どうして分かるだろう。
お前なら幾らでも穏当で真っ当な連れ合いを選べただろうに。
どうしてそんなにおれが好きなのか。そんな子供みたいなこと、今までもこれからも絶対に聞いたりはしないが、理解できない。
どうしてお前を好きになってしまったのか、自分の心もわからないのに。
理解できない物を排除できればどんなにか楽だったろう。
恨みではない。
はじめて銀時を見たときから高杉は今に至るまでずっと困惑しているのだ。
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