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新八は実はゴキブリホイホイ的な、何か強力な引力を発しているんじゃないかと思う時がある。
ぱっつぁんを拾ってから、急に物事が進み始めたような気がするからだ。
トラブルメイカーなんだろう。なんとなく疫病神に近いかんじの。まあ神楽と定春は銀時に取り憑いたスーパーボンビーに違いないが。
とにかくこの碌に給料も払えない従業員と一緒にずるずるしてたらば、途端に疎遠だったヅラだの、知り合いなんかになる気もない真撰組の面々と次から次へと腐れ縁づいていてしまったのだった。
そしてあの夏の花火の日、とうとう銀時は高杉にも遭遇した。生存の噂を得てから随分経っていたけれども。
高杉。
万事屋なんかを始めたのはそりゃあ生活のためもあったが、もしかしたら、あいつがこの事務所を訪ねてきやしないかと期待していたからでもあった。
だがとうの高杉ときたら、鬼兵隊粛正の日から消息すら掴めず、半ばその生存を諦めさせられそうなほど、音沙汰がなかった。
その度に何とも言えない無力感が銀時をますますやる気のない無気力なマダオにしていった。
それでもずっと銀時は高杉が現れるのを待っていた。
待っていたのだ。
生きている、と判ったのは新八のゴキブリホイホイ的引力で再会したヅラからだった。
「はーい。ったく誰だ、こんな夜中にってヅラかよ」
「ヅラではない、桂だ! 銀時。お前に言っておく事があった」
こっちはおまえのせいでだいぶ疲れさせられていい迷惑だ。それが別れた日の夜にたずねてくるってどんなKYなんでしょう。と思いながら銀時は面倒くさくいった。
「んだよ?」
「高杉のことだ」
「た…、あいつ、がどうしたって?」
腹をかこうとした手を止めて、銀時は思わず桂の肩をつかんだ。
「無事だったのか!? つか会ったのか?」
生存情報以外は聞かないぞとのろいをこめて銀時は桂をにらんだ。
「ああ生きていた」
生きてた。
銀時は我を忘れてかけた自分に気がついて、そっと桂の肩から手をどけながら、できるだけ何の気もないように言った。幼馴染相手にもう既に全てが遅かっただろうが、少なくとも声は震えなかった。
「何処で?」
「二年ほど前に、実家の座敷牢でな」
「…。とうとうおとーさまにとっつかまったのか」
遅すぎたくらいだ。もっと早くにそうなるべきだった。そうすれば高杉は戦場で朋輩を失わずにすんだだろう。あんなに泣くこともなかったろうし、死に掛けることもなかった。傷を負い、怒り、憎しみをあらわにして、血の雨を浴びずにすんだ。
そうすれば、優しくではないかもしれないが皮肉交じりにでもわらっていたかもしれない。書をしたため楽を爪弾き、高らかに詩を歌い、仕えるべき人に仕え、才を愛され…。
しかし回収されたのならひとまずは安心ということだ。
もう銀時には二度と会えないことを意味していたが。
「よく会えたな」
同じような立場の桂はだが、銀時に比べれば高杉父の覚えはめでたいのかもしれない。どうだろう。松陽門下というだけで警戒されているといえばされているし。
座敷牢で幽閉といえば、普通は面会謝絶だ。
しかし会えたのだとすれば、和解があったということだ。
「勿論本来面会などできないが、医者の助手として入れて貰った」
「どっか悪かったのか」
銀時は顔を顰める。
怪我をしていたか。それとも病で伏していたか。よくあることだ。よくある…。
「野山獄にいれられて衰弱したらしい」
銀時は目を見開いた。
「野山獄」
因縁深いところだ。松陽が最初に入れられた牢だ。松陽はあれでとても変わり者ではっちゃけたところのある人だったから、三回も入牢したことがあるのだった。そこへとうとう高杉も入ったわけか。
「あいつ、喜んでたんじゃねーの」
「それはもう」
桂もそのときばかりは苦笑した。
しかし野山獄か。
つまり高杉は囚われの身だったということだ。幕吏にとっつかまるよりはましとはいえ、松陽のように幕府に引き渡される可能性もなくもなかった。そうなれば、処刑は免れなかったろう。
鬼兵隊は粛清にあっているのだ。
その鬼の頭目が見過ごされるはずがない。
それを実家に移されたというのは、人誑しの高杉が松陽の二の舞となって、死して永遠を生きることを恐れたか。
むろん大切な高杉家の一人息子だ。高杉父が助命嘆願に動いたことは想像に難くない。
それが厳重監視の上の座敷牢。
「野山獄でもそうとう手を煩わせたそうだ」
「きほんわがままな女王さまだからね」
「魔王とか呼ばれてたぞ」
このおかんな桂は野山獄にいたころの高杉のことまで調べたのか。 ご苦労様なことだ。
「何してたの?」
「紙と筆がないからと、指を食い破って壁中に血文字で」
「げえええ」
「それがまた作戦図だったらしく、分からん奴には悪魔と取引してたとか噂になってな。もちろんすぐに紙と筆が差し入れられて」
「相変わらず手段を選ばない子!」
怖い。
あのこ本気で怖い。
「そんなになっても戦う気ですか」
桂はただ笑うばかりだった。
戦うことでしか生きられない。そう思っていたのかも知れない。でも本当はもっと、松陽がいきていれば違う風に生きれたのではないかと銀時はおもわずにはいられない。
思ってみても詮無いことだ。
それに高杉は否定するだろう。
「あいつはおれを認めると」
「ヅラぁ」
「ヅラではない、桂だ! 大丈夫か、高杉」
「ヅラ、おれぁな、野山獄にいたんだぜ…ぇ」
「といってな。別人のようだったが、その時ばかりは昔のあいつでなぁ」
「…バカじゃねーの」
「そうだな」
「ホント、ばかじゃねーの…アイツ」
でも生きてて良かった。生きててくれて、本当に良かった。
銀時は何度もそう思った。
だが同じくらい、果たしてそれが良い事だったのか分からなくなる事があった。高杉は狂っていた。
「元からさ」
高杉ならそう言っただろう。
だが、高杉の言動は常軌を逸して行く。
銀ちゃんはいつも遠くからやきもきしてればいい。
ぱっつぁんを拾ってから、急に物事が進み始めたような気がするからだ。
トラブルメイカーなんだろう。なんとなく疫病神に近いかんじの。まあ神楽と定春は銀時に取り憑いたスーパーボンビーに違いないが。
とにかくこの碌に給料も払えない従業員と一緒にずるずるしてたらば、途端に疎遠だったヅラだの、知り合いなんかになる気もない真撰組の面々と次から次へと腐れ縁づいていてしまったのだった。
そしてあの夏の花火の日、とうとう銀時は高杉にも遭遇した。生存の噂を得てから随分経っていたけれども。
高杉。
万事屋なんかを始めたのはそりゃあ生活のためもあったが、もしかしたら、あいつがこの事務所を訪ねてきやしないかと期待していたからでもあった。
だがとうの高杉ときたら、鬼兵隊粛正の日から消息すら掴めず、半ばその生存を諦めさせられそうなほど、音沙汰がなかった。
その度に何とも言えない無力感が銀時をますますやる気のない無気力なマダオにしていった。
それでもずっと銀時は高杉が現れるのを待っていた。
待っていたのだ。
生きている、と判ったのは新八のゴキブリホイホイ的引力で再会したヅラからだった。
「はーい。ったく誰だ、こんな夜中にってヅラかよ」
「ヅラではない、桂だ! 銀時。お前に言っておく事があった」
こっちはおまえのせいでだいぶ疲れさせられていい迷惑だ。それが別れた日の夜にたずねてくるってどんなKYなんでしょう。と思いながら銀時は面倒くさくいった。
「んだよ?」
「高杉のことだ」
「た…、あいつ、がどうしたって?」
腹をかこうとした手を止めて、銀時は思わず桂の肩をつかんだ。
「無事だったのか!? つか会ったのか?」
生存情報以外は聞かないぞとのろいをこめて銀時は桂をにらんだ。
「ああ生きていた」
生きてた。
銀時は我を忘れてかけた自分に気がついて、そっと桂の肩から手をどけながら、できるだけ何の気もないように言った。幼馴染相手にもう既に全てが遅かっただろうが、少なくとも声は震えなかった。
「何処で?」
「二年ほど前に、実家の座敷牢でな」
「…。とうとうおとーさまにとっつかまったのか」
遅すぎたくらいだ。もっと早くにそうなるべきだった。そうすれば高杉は戦場で朋輩を失わずにすんだだろう。あんなに泣くこともなかったろうし、死に掛けることもなかった。傷を負い、怒り、憎しみをあらわにして、血の雨を浴びずにすんだ。
そうすれば、優しくではないかもしれないが皮肉交じりにでもわらっていたかもしれない。書をしたため楽を爪弾き、高らかに詩を歌い、仕えるべき人に仕え、才を愛され…。
しかし回収されたのならひとまずは安心ということだ。
もう銀時には二度と会えないことを意味していたが。
「よく会えたな」
同じような立場の桂はだが、銀時に比べれば高杉父の覚えはめでたいのかもしれない。どうだろう。松陽門下というだけで警戒されているといえばされているし。
座敷牢で幽閉といえば、普通は面会謝絶だ。
しかし会えたのだとすれば、和解があったということだ。
「勿論本来面会などできないが、医者の助手として入れて貰った」
「どっか悪かったのか」
銀時は顔を顰める。
怪我をしていたか。それとも病で伏していたか。よくあることだ。よくある…。
「野山獄にいれられて衰弱したらしい」
銀時は目を見開いた。
「野山獄」
因縁深いところだ。松陽が最初に入れられた牢だ。松陽はあれでとても変わり者ではっちゃけたところのある人だったから、三回も入牢したことがあるのだった。そこへとうとう高杉も入ったわけか。
「あいつ、喜んでたんじゃねーの」
「それはもう」
桂もそのときばかりは苦笑した。
しかし野山獄か。
つまり高杉は囚われの身だったということだ。幕吏にとっつかまるよりはましとはいえ、松陽のように幕府に引き渡される可能性もなくもなかった。そうなれば、処刑は免れなかったろう。
鬼兵隊は粛清にあっているのだ。
その鬼の頭目が見過ごされるはずがない。
それを実家に移されたというのは、人誑しの高杉が松陽の二の舞となって、死して永遠を生きることを恐れたか。
むろん大切な高杉家の一人息子だ。高杉父が助命嘆願に動いたことは想像に難くない。
それが厳重監視の上の座敷牢。
「野山獄でもそうとう手を煩わせたそうだ」
「きほんわがままな女王さまだからね」
「魔王とか呼ばれてたぞ」
このおかんな桂は野山獄にいたころの高杉のことまで調べたのか。 ご苦労様なことだ。
「何してたの?」
「紙と筆がないからと、指を食い破って壁中に血文字で」
「げえええ」
「それがまた作戦図だったらしく、分からん奴には悪魔と取引してたとか噂になってな。もちろんすぐに紙と筆が差し入れられて」
「相変わらず手段を選ばない子!」
怖い。
あのこ本気で怖い。
「そんなになっても戦う気ですか」
桂はただ笑うばかりだった。
戦うことでしか生きられない。そう思っていたのかも知れない。でも本当はもっと、松陽がいきていれば違う風に生きれたのではないかと銀時はおもわずにはいられない。
思ってみても詮無いことだ。
それに高杉は否定するだろう。
「あいつはおれを認めると」
「ヅラぁ」
「ヅラではない、桂だ! 大丈夫か、高杉」
「ヅラ、おれぁな、野山獄にいたんだぜ…ぇ」
「といってな。別人のようだったが、その時ばかりは昔のあいつでなぁ」
「…バカじゃねーの」
「そうだな」
「ホント、ばかじゃねーの…アイツ」
でも生きてて良かった。生きててくれて、本当に良かった。
銀時は何度もそう思った。
だが同じくらい、果たしてそれが良い事だったのか分からなくなる事があった。高杉は狂っていた。
「元からさ」
高杉ならそう言っただろう。
だが、高杉の言動は常軌を逸して行く。
銀ちゃんはいつも遠くからやきもきしてればいい。
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