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眠りは浅く、短いのが常だというのに、ぐっすりと熟睡した感覚の後、高杉は片目を開く。
目が覚めるとまだ夜みたいで部屋の中は真っ暗だった。
(…?っつーか、ここはどこだ?)
横たわった高杉が横目で見上げると、薄ぼんやりとした板の並びは普段自分が寝泊りしている和室の天井とあまり違和感がなかった。
だけど、上掛けは常日頃使っている羽根布団より明らかに体に重く、窮屈で、そのくせ何故だかひどく懐かしいにおいがした。自分の布団はこんなではない。仮宿の客用布団だってそうだ。まるで戦時中の、あれの布団の中にいるみたいだ。
そう思って高杉はあたりを伺う。
周りに人の気配はなく、しん、と静かだった。
たしか自分は三郎の父親平賀源外の仇討ちを見届けようとしていたはずだ。そこで銀時を見かけてついいたずら心をだして背後から銀時に迫ったのだ。
(銀時)
思ったとおり不愉快な気持ちにしかならなかったが、そのあと。
布団の中でわずかに身じろぎすると、下に敷いていた腕の痺れとともに、思い出ししたかのようにひりひりと鳩尾が痛む。
高杉は銀時に強かにそこを打たれたのだ。最初の拳は避けたけれども。
つまり、情けないことに当身を食らってココに運ばれたってわけだ。
あれがなんのつもりで自分の家の布団の中に高杉を転がしていったのかは分からない。あの頃の習慣でつい風邪でも引かれたら面倒だとでも思ったか。
どちらにしろ銀時はいまここにはいない。
高杉はこうしてはいられないと身を起こそうとした。
「!」
だがやたら窮屈だと思ったのは気のせいではなかった。高杉は半身を起こすことには成功したが、足をとられてもんどりうちそうになった。
縛られている。
(どういうつもりだあいつ!)
真撰組にでも突き出す気か。
だったら自宅になんかつれて来ないだろうと思いながら高杉は銀時の意図が読めないでいる。しかしこうしてはいられない。自分の体に巻かれた縄を確認する。
食い込むほどでもなく、だが緩みのないプロの仕事だ。その上、腕、手首、それに足首と三箇所にわたって縛られていて、関節をはずしても縄ははずせそうにない。従軍中に身につけた技だ。ろくでもないことだけは覚えているらしい。
(刀…)
は、ない。
抜き取られて隠されたか。あれがあればなんとか縄を切れただろうが、銀時の目的が拉致監禁ならそんなものは高杉の眼に入るところにはおいておかないだろう。
そう思って高杉は眉をひそめた。
あれが高杉をさらって閉じ込めてどうするというのだ。
何もなかったように。
死んだ魚のような目でぬるま湯に浸かって、世間が自分という伝説を忘れるのを待っているようなあれが。
銀時は高杉に用などない。
あの頃の自分と繋がる鬼兵隊総督には。
高杉のように腑抜けた奴を見下げて、嫌味の一つでも投げかけてやろうとかそんな風には考えもしない。
もうあれは白夜叉ではないのだ。
だから銀時は自分に会ってもただ面倒なだけだろう。高杉はいまだに血と硝煙と死の只中にある。
そう思って、高杉はひやりすとする。
だがあれは同時に白夜叉の牙をまだ持っている。
ごろごろと転がってふすままで移動すると高杉は両足を上げて、ふすまを開いた。銀時が何を考えているのかは図りかねるが、あれの意図どおりにここに留まるのは本位ではない。
開いた先には居間のような板敷きの広い部屋が広がっていた。ソファーや机がある。刃物の類はみあたらない。高杉は間取りを確認しながら、外に通ずると思われる廊下への扉を開けた。
これも引き戸で良かった。
足で開けると玄関と物置、そして小さな台所が見つかる。
台所なら刃物に事欠かないだろう。そう思いながら、物色するとやはり包丁が見つかった。刀を取り上げることは思い当たったが、包丁を隠すまでには至らなかったようだ。
銀時がばかで助かった。
もちろん、包丁がなければガラスを割って代わりにした。
だが包丁とガラスではずいぶんと効率が違う。高杉は後ろ手に包丁を抜く。歯の角度をあわせるのに少し苦労としたが、だが一度服と縄の間に入れてしまえばあとはざりざりと動かすだけだった。
これなら十分もあれば、腕は自由になりそうだった。
ざりざりざりと不自由な体勢で縄を切っていく。こまめに料理をしているのか、包丁の切れ味は悪くなかった。それでも寄り合わされた縄の繊維を断つのは簡単ではなく、思ったよりは時間がかかった。それでも高杉は両腕にまわされた縄を切ったし、それから後ろ手にくくられていた手首はそのままに、足を通して、体の前へ手を持ってくることに成功する。
足と手とどっちを先に切るか少し考えたが、効率を考えたら足だった。包丁を逆手に持って切れば先ほどよりはずっと簡単に足は自由になった。
(あと少し)
高杉は両足をあわせて、包丁を固定すると手首を出してまたざりざりとはじめた。
階段を上がってくる足音を聞いたのはその時だった。
(銀時!?)
後編のタイトルは白いわんこにしようと思ってます。 銀さんのターンね。
目が覚めるとまだ夜みたいで部屋の中は真っ暗だった。
(…?っつーか、ここはどこだ?)
横たわった高杉が横目で見上げると、薄ぼんやりとした板の並びは普段自分が寝泊りしている和室の天井とあまり違和感がなかった。
だけど、上掛けは常日頃使っている羽根布団より明らかに体に重く、窮屈で、そのくせ何故だかひどく懐かしいにおいがした。自分の布団はこんなではない。仮宿の客用布団だってそうだ。まるで戦時中の、あれの布団の中にいるみたいだ。
そう思って高杉はあたりを伺う。
周りに人の気配はなく、しん、と静かだった。
たしか自分は三郎の父親平賀源外の仇討ちを見届けようとしていたはずだ。そこで銀時を見かけてついいたずら心をだして背後から銀時に迫ったのだ。
(銀時)
思ったとおり不愉快な気持ちにしかならなかったが、そのあと。
布団の中でわずかに身じろぎすると、下に敷いていた腕の痺れとともに、思い出ししたかのようにひりひりと鳩尾が痛む。
高杉は銀時に強かにそこを打たれたのだ。最初の拳は避けたけれども。
つまり、情けないことに当身を食らってココに運ばれたってわけだ。
あれがなんのつもりで自分の家の布団の中に高杉を転がしていったのかは分からない。あの頃の習慣でつい風邪でも引かれたら面倒だとでも思ったか。
どちらにしろ銀時はいまここにはいない。
高杉はこうしてはいられないと身を起こそうとした。
「!」
だがやたら窮屈だと思ったのは気のせいではなかった。高杉は半身を起こすことには成功したが、足をとられてもんどりうちそうになった。
縛られている。
(どういうつもりだあいつ!)
真撰組にでも突き出す気か。
だったら自宅になんかつれて来ないだろうと思いながら高杉は銀時の意図が読めないでいる。しかしこうしてはいられない。自分の体に巻かれた縄を確認する。
食い込むほどでもなく、だが緩みのないプロの仕事だ。その上、腕、手首、それに足首と三箇所にわたって縛られていて、関節をはずしても縄ははずせそうにない。従軍中に身につけた技だ。ろくでもないことだけは覚えているらしい。
(刀…)
は、ない。
抜き取られて隠されたか。あれがあればなんとか縄を切れただろうが、銀時の目的が拉致監禁ならそんなものは高杉の眼に入るところにはおいておかないだろう。
そう思って高杉は眉をひそめた。
あれが高杉をさらって閉じ込めてどうするというのだ。
何もなかったように。
死んだ魚のような目でぬるま湯に浸かって、世間が自分という伝説を忘れるのを待っているようなあれが。
銀時は高杉に用などない。
あの頃の自分と繋がる鬼兵隊総督には。
高杉のように腑抜けた奴を見下げて、嫌味の一つでも投げかけてやろうとかそんな風には考えもしない。
もうあれは白夜叉ではないのだ。
だから銀時は自分に会ってもただ面倒なだけだろう。高杉はいまだに血と硝煙と死の只中にある。
そう思って、高杉はひやりすとする。
だがあれは同時に白夜叉の牙をまだ持っている。
ごろごろと転がってふすままで移動すると高杉は両足を上げて、ふすまを開いた。銀時が何を考えているのかは図りかねるが、あれの意図どおりにここに留まるのは本位ではない。
開いた先には居間のような板敷きの広い部屋が広がっていた。ソファーや机がある。刃物の類はみあたらない。高杉は間取りを確認しながら、外に通ずると思われる廊下への扉を開けた。
これも引き戸で良かった。
足で開けると玄関と物置、そして小さな台所が見つかる。
台所なら刃物に事欠かないだろう。そう思いながら、物色するとやはり包丁が見つかった。刀を取り上げることは思い当たったが、包丁を隠すまでには至らなかったようだ。
銀時がばかで助かった。
もちろん、包丁がなければガラスを割って代わりにした。
だが包丁とガラスではずいぶんと効率が違う。高杉は後ろ手に包丁を抜く。歯の角度をあわせるのに少し苦労としたが、だが一度服と縄の間に入れてしまえばあとはざりざりと動かすだけだった。
これなら十分もあれば、腕は自由になりそうだった。
ざりざりざりと不自由な体勢で縄を切っていく。こまめに料理をしているのか、包丁の切れ味は悪くなかった。それでも寄り合わされた縄の繊維を断つのは簡単ではなく、思ったよりは時間がかかった。それでも高杉は両腕にまわされた縄を切ったし、それから後ろ手にくくられていた手首はそのままに、足を通して、体の前へ手を持ってくることに成功する。
足と手とどっちを先に切るか少し考えたが、効率を考えたら足だった。包丁を逆手に持って切れば先ほどよりはずっと簡単に足は自由になった。
(あと少し)
高杉は両足をあわせて、包丁を固定すると手首を出してまたざりざりとはじめた。
階段を上がってくる足音を聞いたのはその時だった。
(銀時!?)
後編のタイトルは白いわんこにしようと思ってます。 銀さんのターンね。
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