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 新八からは心づくしの好物ばかりの昼ご飯。神楽からは酢昆布をもらった。神楽にしてはこれは破格の厚遇らしい。ものすごく恩に着せられた。
 まあ、そんなにいうなら覚えてろよ、と思う。新八や銀時の返しはともかく、心に期する物があって高杉はありがとうよ、と言いながら心の中でくくくと笑う。
 うっかり表情に出して感づかれるといけないので、そこは鉄壁の鉄面皮を維持しつつ高杉は目にもの見せてやるとかましてやる気満々だった。
 これが銀時だったら、思いっきり腹黒く分かりやすく企んだ顔をしてやるのだが。
 それを見た来島は晋助さまは女子供に甘いっすとか言っていた。
 来島は、江戸風鈴を持ってきて、窓辺に飾った。空調が利いている室内で窓を開けることはないが、夜になったら夜風でもいれようか。下げられたばかりの金魚がゆらゆらと揺れて、高杉は目を細めてそれを見た。
「本当は本物がいいと思ったんすけど」
 と高杉が喜んでいるのが分かったのか、来島はほんのりと照れながらいった。
「いや、これがいい」
 数年ともに過ごしたから来島もそれなりに高杉の嗜好を把握している。夏には金魚だ。だが高杉にはどうせ世話ができない。だから風鈴でちょうどいいのだ。
 来島と一緒にやってきた武市は無聊の慰めに碁盤を持って来て一局打っていった。似蔵は切子の杯、白石からは着物、他にも連名で将棋盤や茶道具、花池の彫られた硯などが持ち込まれた。
 これ着た高杉に会いたいとか、また一緒に遊んでね、とかお手紙下さいねとか、一緒に呑みましょうやということだろうと思いながらそれぞれ受け取った。
 万事屋に連れてこられた時もいつの間にか箪笥二竿がおかれていたが、これでますます和室のほとんどが高杉のもので浸食されてしまうだろう。
 家主の銀時は約束通り酒を用意していた。
「えー、それで呑むのぉ?」
 と嫉妬まじりにいっていたが、目の見えない似蔵が折角一つ一つ手に取って選んだのだ。赤い切子は細工が細かくてうつくしい。使ってやってもいいだろうと高杉は頷いて酌をさせた。
 まさか銀時侍らせて酌をさせられるなんて思ってもみなかったな、と一杯。
 久しぶりの酒は水のようにするりと喉を通り、しかし相当張ったのだろう。辛口の冷やはすっと特有の香りをとともにかっと胃をやいた。
「うまい」
「はいはい、一気に呑むと廻るよ。ほら、ぱっつぁんが作った飯もあるしね」
「おまえは俺の母親か」
「あ〜、今度挨拶いかないとねー」
 そういわれてにぎった箸を取り落としそうになった。
「ヅラが作ったとか言う墓も見ときてーし。おたくのおぼっちゃまいただきましたってさ」
 誰が行くかと思いながらそのまま高杉はざるそばに冷やをふりかけ、ずるっといった。
 蕎麦といえば桂だが高杉も蕎麦は好きだ。米より喉の通りがいい。冷や麦よりも香りがいいし、特に夏場は蕎麦で生きているといっても過言ではない高杉だった。
 箸休めにナスの煮浸しをつつきながら、もう一杯。
 言われた通り、少しずつ口に含んでもう一杯。その三杯目でくらりとした。
「…?」
「高杉?」
 酩酊を感じて眉を顰めた。心無しか、頬が熱い。雪火の症状に似ているが、あの病は再発はしない。だとしたら酒のせいか?
 高杉はくらくらしながら手に持っていた切子を見る。
 まさかもう、酔ったのか。
 確かに病み上がりだが、それとこれとは関係がないはずだ。高杉はザルやワクの部類で、昔は駆けつけ三杯どころか、二升でも三升でもそれこそ水のように飲み干して、夜通し飲み明かすなんてしょっちゅうだった。
 一晩で二十両、などいう武勇伝もざらな高杉だったのに。
「オイオイ真っ赤で可愛いな。酔っちゃった?」
「そんなわけ…」
 そういう高杉に銀時が水を差し出した。
「しょうがねぇよ。お前肝臓切ってるから」
 そういえばそうだった。
 内蔵のあちこちから出血しまくっていた時期に肝臓の一部を切除したのだった。多臓器不全まで起こしていたから高杉の体力が保たなかったらそのまま死んでいただろう。薬が効いて、免疫システムが回復してもしばらくは危なかったらしい。
「折角だけどこれくらいにしとこうぜ」
 道理でちょっとだけ、ほんのちょっとだけだぜとかしつこいくらい言っていたはずだ。
「またそのうち続き呑ましてやっから」
「ほんとか?」
「まあ経過をみて。肝臓って切っても元に戻るらしいし」
 それを聞いて少し安心する。一番酷かった肺は肺でズタボロだったらしく、もう一生吸うなとか銀時と医者に止められた。この家には煙草盆はおろか、煙管さえもない。この上酒も駄目なんて人生何を支えに生きろというのか。
「銀さんがいるじゃねーか」
「お前が酒のかわりになるかよ」
 大体銀時に勝てるのなんか、酒量と頭の出来ぐらいしかなかったのに。むかつく。
「あら、心外よ。銀さん酒よりも全然晋ちゃんを気持ちよくできるけど」
「おい、」
 折角銀時に貰った酒もたった三杯しか呑めず、そこはかとなく不機嫌になった高杉に距離を詰めながら銀時は言った。
「なあ、高杉。おれ、本当に受け取ってほしいもんは、他にあんだけどよぉ」
「なに…?」
 首元をぱたぱたと仰ぎながらせめて酔いを醒まそうと水をのんでいた高杉の手を銀時がとる。
「知ってんだろ。いつになったら貰ってくれんだよ?」
「…ぎん、」
 それはもしや、プレゼントのリクエストをとった時に言っていたアレか。俺の愛とか言う奴か。そんなん押し付けられても困る。確かにずっと一時期の中断はあったが、迷惑なくらいにずっと捧げられてきたものだったが。
 高杉は見つめられた視線を外してうろうろと彷徨わせた。まだ今なら逃げられる。そう思っていた。
「ごちゃごちゃ考えてねーで腹ァ括れよ。好きなら好きでいいじゃんか。放置しねーで手ぇ伸ばせや」
 俺だけ手を伸ばしてもそっちが掴んでくれなきゃ届かないこともある。そういうのはもうご免だと逃げる高杉を捕らえて赤い目が告げる。
「奥さん、俺をお前のもんにして?」
「お前にためには生きれない」
「生きてればそれでいい。俺の傍で」
 圧に屈して高杉は頷かないわけにはいかなかった。まだ昼時だったのに。
 ふざけんな。お前なんかとっくの昔っからおれのもんだろくらい言えば良かった。
 というか、誕生日なのになんで銀時のお願いきかなきゃならなかったんだろう。
「いいじゃんか、酒の百倍は気持ちよかっただろ?」
 とか言っていた銀時を高杉は叶う限りの力で殴っといた。









今日から名実共に嫁です。

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