総督至上サイト swallowtail mania since 090322 小説はカテゴリーの目次をクリックどーん。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
まだおおおおおおおお!
てめ、まだおおおおおおおお!
あたし長谷川さんのことわりと好きだったんですよ。だって銀さんの唯一?の友達だもんね。
攘夷組はさ〜、友達とかじゃなくてアレ幼なじみって属性でさ、今現在お友達かというとちょっと微妙というか気軽に一緒にパチンコとかいけないじゃない。海とか。ないないない。特に高杉。
でもさ〜。台詞見ないであのコマだけ先に見ちゃったらな。
ないないないない、でもちょっとどうなの! いやでもないない。
って言うさ。心理を空知てんてーに弄ばれたよ!
てんてーほんと天才だよ。
んでもって来週の対決も面白そう。あそこで対決に入ってない第三勢力はどう絡んでくるのかとか、崎をやっちゃったのは誰かとか。
長くやってくれるといいのにな〜。
あとね、銀ちゃんと沖田のどS二人が組むと酷いということが分かった。あの土方が。絶対に銀ちゃんに負けたくない土方が。
てめ、まだおおおおおおおお!
あたし長谷川さんのことわりと好きだったんですよ。だって銀さんの唯一?の友達だもんね。
攘夷組はさ〜、友達とかじゃなくてアレ幼なじみって属性でさ、今現在お友達かというとちょっと微妙というか気軽に一緒にパチンコとかいけないじゃない。海とか。ないないない。特に高杉。
でもさ〜。台詞見ないであのコマだけ先に見ちゃったらな。
ないないないない、でもちょっとどうなの! いやでもないない。
って言うさ。心理を空知てんてーに弄ばれたよ!
てんてーほんと天才だよ。
んでもって来週の対決も面白そう。あそこで対決に入ってない第三勢力はどう絡んでくるのかとか、崎をやっちゃったのは誰かとか。
長くやってくれるといいのにな〜。
あとね、銀ちゃんと沖田のどS二人が組むと酷いということが分かった。あの土方が。絶対に銀ちゃんに負けたくない土方が。
PR
桂は忙殺されていた。政のあれこれを戦に集中する為に高杉が一抜けして桂にすべてを押し付けたせいだ。元々高杉は相当な軍略家で自ら鬼兵隊という手足を欲しがったように、戦上手だった。
攘夷戦争時代共闘していた時にも上や、支援者との交渉ごとは桂に一任する嫌いがあった。一隊の長でもあったし、自分でもゴキブリホイホイのように色んな手合いを 引きつけていたから、まるでしないというわけではなかったが。
桂が来たからには丸投げ。
そんなわけで当初に言った通り、薩長同盟が締結した後も桂は新政府の参与になったり、朝廷でのあれこれに奔走させられていた。
(これも日本の夜明けの為)
大江戸庶民を守り、理想の世を実現する為だと思っていたのだが、しかしそれだけではないと知ったのはエリザベスが銀時からのメールを回してきてからだった。
銀時は以前教えていた連絡先へ電話をしたのだが、そちらは引き払った後だった。メールアドレスは生きてはいたが、桂は見れる状況ではなかった。気をきかせてくれたエリザベスが転送してくれなかったら今頃もまだ朝廷で喧々囂々しているところだった。
「御神酒徳利!」
桂は二三のやりとりで裏付けを取った後、次から次へと書類を運んでくる自分の補佐たちを呼びつけた。
「はいっ」
「何ですか?」
御神酒徳利とセットにされるこの二人は挙兵の折には一隊を率いたが元々は政治向きだったので、攘夷戦争の頃のように桂の使いっ走りをしたり、国元との連絡など様々な業務を任せていた。
一人は村塾出身で、高杉に押し付けられて若い頃から桂が後見していることになっているし、今一人は高杉同様家柄もよろしく、御両殿の近習をつとめるほどだ。
留学の経験もあり、能力も充分、そしてよく知った仲だった。ただし、前述の通り高杉とも縁が濃い。桂が大江戸で活動していた分、桂とのそれは薄れ、逆に高杉とは深まった感がある。
「高杉は今何処にいる?」
桂の問いに答えたのは井上の方だった。
「高杉なら鬼兵隊本隊と北陸道戦線だろ?」
流石、しゃあしゃあと答える面の皮の厚さだ。粛正されかけてなますにされても生き残っただけあって、肝は座りきっている。
「山田と山県からもそう聞いている。本当にそこだろうな?」
すぐに白状するとも思っていなかった桂は村塾出身の指揮官たちの名前を挙げて重ねて問う。攘夷戦争を戦い、粛正の嵐をやり過ごして潜伏し、桂たち同様まだ生きている者もいるのだ。
死して不朽の見込みあらば、いつでも死ぬべし
生きて大業の見込みあらば、いつでも生きるべし
先に死んだ者の無念を背負うなら生きて大業をなさねばならなかった。それが先生の教えだからだ。
数人の例外もなくもなかったが、村塾の生き残り達は、高杉の挙兵に力を尽くしている。
村塾の絆は強い。だがそればかりではない。今が生死を賭ける時だと理解したからだ。そう桂は思っていた。
「さあ? 何しろ高杉さんのすることですからねぇ」
空とぼける伊藤を見ながら思う。桂は謀られていたのだった。
(あれは元々、人望があるわけでもないのに不思議と人を従わせるところがあった)
呼びつけられた桂だとて今の今まで要望通りにしてやっているのだ。人のことを言えた義理ではないが。それにしてもと思う。
「…。そうか。では本当なんだな。高杉が雪火で北陸にはいないのは」
病に侵され後がないことを知った高杉は走り通すことを決めた。しかしそれを桂には秘していた。ただ桂一人に。
他の総督たちは知っていて、口止めをされていたのだ。
「何言ってんですか桂さん!」
「そうですよ、俺らそんなことひとっことも!」
この二人もだ。
軍内に動揺が広がるのを厭うたのだろう。だがそれにしても桂に黙っているとはどういうことだ。恐らく辰馬や銀時に漏れることを恐れたのだろう。それにしても。
「ふん。何か良からぬことを企んでいるのは知っていたが、あまり俺を甘く見るな。しらばっくれてもネタはあがっているのだ。銀時がエリザベスを通して知らせて来た」
「あー。あいつまだ生きてたのか。ふーん。しぶといなぁ」
ふつふつと怒りながら桂は情報元を公開する。すると、井上は死ねばいいのにと思っているようでそんなことを言った。どうやら井上は白夜叉とまで言われた銀時が一般人として暮らしていることを快く思っていないようだ。
「坂田さん? 大江戸の坂田さんがなんで高杉さんのそんな情報。高杉さんが雪火持ち込んだって噂はたったそうですけどストーカー? いやいやいや」
村塾出身だけあって、銀時の高杉好きといざという時のどS具合を知っている伊藤はやや腰が引けた感じだ。しかし腰が引けているもののまだ隠し通す気なのかそんなのただの根も葉もない噂ですってといい募る。
しかし彼らが共謀して高杉の方に付いたからと言って、桂に味方しない者がいない訳ではない。
「裏付も取った。俺と大村殿は仲良しこよしの仲。聞けば大概のことは答えてくれる。聞かなければ教えてくれんがな。口止めするだけ無駄だ」
二人はがくりと肩を落とした。
そっちかあああああああ! ああ、すみません高杉さん! とか言っている二人を他所に立ち上がった桂は宣言した。
「そう言う訳で俺は行くぞ。昔から奴の暴走を止めるのが俺の役目だ!」
今より政務を投げ出して参るという訳で。桂は高杉のいる東山道軍本隊のいる武州までやって来たのだった。
「また子ぉ」
高杉は一応の味方である桂に撃鉄を起こした思い切りの良い来島に声をかける。
「はい、晋助さま!」
「三十六計」
「了解っす」
来島は牽制の一発をずどんと桂の足下にぶっ放す。その間に高杉は裸足のまま庭へと降りて脱兎の如く走った。ここで桂に捕まって無為に時間を取りたくはない。全てを知った今、無理矢理薬を飲ませることは生還率を考えれば桂はきっと強要できない。それにしても問答無用で戦場から引き離されるだろう。
西郷のいる東海道軍が定めた江戸城総攻撃まで一週間を切っている。
「あっ、こら待て、高杉! 貴様走るんじゃない! まだ話が…!」
銀時とぶつかるならその日だろうと高杉は思っていた。その日まで生き延びる。高杉は桂の静止を振り切って走った。
息が切れて、目が霞む。喉が切れて、口腔の奥から血の匂いがあがってくる。慣れた不快感に、咳き込みたい衝動が、胸を圧迫した。しかしここで倒れればおしまいだ。二度と臥所から出ることが出来なくなることが高杉には分かっていた。
「晋助さま」
ふらつく高杉の手を手袋をした来島が掴んで一緒に走った。
「もうすぐ車止めっす」
「ああ」
高杉の命を掛けた願いを鬼兵隊は叶えようとした。他の諸隊の同志たちもだ。それはもう半ば以上達成されたようなものだ。幕府は終わる。誓いは果たされる。復讐は遂げられる。あとは高杉がいなくても勝手に進んで行くだろう。奪われたのは高杉一人ではない。
だから本当は高杉はもう眠ってもいいのだ。
寛容なのか同情なのか、高杉の自由にさせてくれるものたちがいても、一度倒れれば高杉の体そのものが、戦場に立ち続けることをこれ以上許さない。
今でさえ常勝の軍神と崇められている高杉の強い意思がなければ死までの静養を余儀なくされていただろう。
意思の力で立っていても、終わりの時は近い。
鬼兵隊は離れた場所から高杉を固く守っていたし、高杉よりも強い奴は現れなかった。相手になりそうな真選組も近藤が捕縛され、戦線から離脱するかもしれない。高杉はこのままでは戦場で死ぬこともできない。無様なことだ。
畳の上で死ぬなんて、死んで行った奴らに顔向けできないと思っていたが、自分のような者には逆にふさわしいのかもしれない。
華々しく散ることも出来ずに、無惨に病で倒れ…。
それでも自分が幸運だということは高杉には分かっていた。
(俺は本懐を遂げられる)
充分だ。もう。
後事を託して、腹をかっ捌き、それで自分の身の始末をつけてもよかった。道はつき、復讐も、獣の呻きももろともにそうして死へと堕ちて逝っても。
あと、思い残すことがあるとしたらそれは銀時のことだろう。
本当だったら、何も想い残すこともなかったのに。
そうだ。高杉は銀時が攘夷戦争から手を引いた後、トラブルを起こし、小さな災厄に見舞われながら、しぶとく生きていることに何の不満もなかった。
それこそが松陽の願ったことではなかったかとさえ思っていた。
銀時は死んだ魚のような目をしていつつも、なんだか楽しそうだった。多分幸福だった。
松陽を失ってから初めて得た穏やかで騒々しい時間だっただろう。自分では与えてやれない、そして自分には与えられないものだとしても、高杉は安堵していた。
似合いだった。銀時には。
白夜叉を飼い殺しながら家族のようなメガネとチャイナと銀時が根を張った街の人々といつまでもそうしていればいい。銀時は自分が守れる範囲のものを、今度こそ守るだろう。
どれほど高杉が一緒くたに破壊しようとしてもそこだけは守るだろう。そう思っていた。
(先生。先生…俺のことはいい、銀時の為にもう少しだけ時間をくれ…)
当然だがこれまで高杉は銀時に斬ってほしいと願ったことはなかった。そんなことになったら志半ばで死んでしまう。
それは向こうから言い出したことだ。あれ以上、人々に害をなす高杉のやり方を見ていられなかった銀時と桂が、高杉を止める為の最後通牒をつきつけただけだ。
そんな恫喝で止められることなら最初から誓いはしない。志がなくなれば高杉は高杉ではなくなる。なんのために生き延びたかも分からない。
平和に平穏に大過なく銀時が幸福に過ごしたいならそうすればいい。虐殺に目をつぶり、粛正を忘れて、何事もなかったように忘れ、そうした生活を優先したいならそうすればいい。だがそこに高杉の望みはない。
許さない。
天人も、天人に迎合し、攘夷志士を弾圧した政府も、それをただ受け入れた世間という奴も、全てが高杉の敵で破壊の対象だ。そう。
己の幸福も未来も命を投げ打ってでも高杉にはしなくてはならないことがあった。
(誰だって変わって行く。戦うと言ったお前が変節したように。俺は変わって俺にしかできないことをする。最期まで戦い抜く)
破壊だ。高杉は旧体制の破壊をひたすらに目指した。幕府に支配されるという常識の破壊。階級制度の破壊。天人に貪り尽くされても仕方がない社会構造を、秩序をぶっ壊す。その破壊を、優しさや、希望、他者への労りに絡めとられて他の誰も憎しみを遂行出来ないというなら高杉がする。
誰を殺し、泣かせ、犠牲にしても。全てを取っ払ってやろう。血と怨念に満ちた閉塞した世界に風穴を空けて滅ぼしてやる。たとえ、そのために全てが灰燼に帰し、更地になっても構うものか。
憎めよ銀時、こちら側に来れないなら、そう思いながら。そうしてどうしようもない奴だったと苦々しく回想し次第に忘れていけばいい。
攘夷戦争のただ中で、あるいは銀時が去った後でも、自分だけが悲嘆にくれているというように、一所に落ち着き、大事なものを作り固め、守ろうとする銀時をあざ笑いながら、高杉はあちらこちらを転々としては世界に喧嘩を売りつづけた。
それを直接見、また伝え聞いた銀時はむかついただろう。先生の教えをねじ曲げて復讐に生きる高杉に怒らないまでも、苦しんだだろう、悲しんだろうし、辛かったろうと思う。だからいっそ無視するか、憎んでいてほしかった。
それなのに。
とっくに愛想をつかされているだろうと高を括っていた。それなのにまだ銀時は高杉を諦めてはいなかった。自分のものだと思っている。
高杉は心底驚いた。顔に出さなかっただけで。
(どんだけ馬鹿なんだ)
銀時が一緒に幼少を過ごした頃の堅物で融通が利かず、死ぬほど自尊心の高いけれども屈託なく笑っていられた高杉など何処にもいない。最初から何処にもいなかったのに。
ただ高杉は多少松陽に矯正されたため、自分の醜く、汚い、目的の為なら人を虐げても構わない、真っ黒に爛れた性根をみせなかっただけだ。桂などはよく知っていたから大魔王だの獣だのと好き勝手言っていた。
死んだ後に、銀時の記憶の中でのみそれは再構築されるのだろう。
(どんだけ未練がましいんだよ。どんだけぐずぐずしてんだよ。俺だけがお前を想っていればいいことだったのに)
銀時などは高杉を憎んで、死ぬ時にザマアミロとかいえばよかったのだ。
だけどまだ、銀時は高杉を懐に入れて大切にしている。
守りたい者と守りたい者が両立しない矛盾が生じた。そんな葛藤に放り込みたい訳ではなかった。その上高杉は雪火だ。どうあってももう、この病魔から守ることなどできやしない。そんな思いをさせたいわけがなかった。何も守れないと悄然と戦場を去った銀時を虚しく見送ったからこそ。
(お前、馬鹿だなぁ銀時)
昔のものなどさっさと捨てればいい。あの戦場に桂が、辰馬が、銀時が、残して行ったもの。そういうものこそが、高杉のものなのだから。
(お前本当にどうする気なんだ?)
銀時自身、高杉を斬ることにそう乗り気でないことはもう分かっている。まだ迷ってる。
来ないなら来ないでいい。渡した刀は形見になる。手元に置かなくても幾ばくかの金になるだろう。
だがもし来るのなら。
(面倒だが仕方がねぇ)
惚れた弱みだ。銀時の為にもう少し力を尽くしてやろう。最期まで足掻いて、生きて、思い切らせてやる。近藤への嫌がらせも、錦の御旗偽造、偽りの詔勅、公武合体派の天皇暗殺、あることないこと洗いざらい吐いて気持ちよく斬らせてやる。
高杉得意の一石二鳥だ。
(うっかり俺がぶっ殺しちまうかもしれねーが。それもお前の為なのかもしれねぇ。俺にそれだけの力が残っていればの話だが)
「晋助さま!」
来島が叫んでいる。意識を飛ばしかけていた高杉は必死で片目を凝らした。
視界を過った銀髪に高杉はうっとりと微笑んだ。そのまま来島から汗ばんだ手を離し、抜き様に払う。
メロドラマになって来た。本望!
ツンデレだった。本望! 本望!
次は銀さんと多分真選組。
攘夷戦争時代共闘していた時にも上や、支援者との交渉ごとは桂に一任する嫌いがあった。一隊の長でもあったし、自分でもゴキブリホイホイのように色んな手合いを 引きつけていたから、まるでしないというわけではなかったが。
桂が来たからには丸投げ。
そんなわけで当初に言った通り、薩長同盟が締結した後も桂は新政府の参与になったり、朝廷でのあれこれに奔走させられていた。
(これも日本の夜明けの為)
大江戸庶民を守り、理想の世を実現する為だと思っていたのだが、しかしそれだけではないと知ったのはエリザベスが銀時からのメールを回してきてからだった。
銀時は以前教えていた連絡先へ電話をしたのだが、そちらは引き払った後だった。メールアドレスは生きてはいたが、桂は見れる状況ではなかった。気をきかせてくれたエリザベスが転送してくれなかったら今頃もまだ朝廷で喧々囂々しているところだった。
「御神酒徳利!」
桂は二三のやりとりで裏付けを取った後、次から次へと書類を運んでくる自分の補佐たちを呼びつけた。
「はいっ」
「何ですか?」
御神酒徳利とセットにされるこの二人は挙兵の折には一隊を率いたが元々は政治向きだったので、攘夷戦争の頃のように桂の使いっ走りをしたり、国元との連絡など様々な業務を任せていた。
一人は村塾出身で、高杉に押し付けられて若い頃から桂が後見していることになっているし、今一人は高杉同様家柄もよろしく、御両殿の近習をつとめるほどだ。
留学の経験もあり、能力も充分、そしてよく知った仲だった。ただし、前述の通り高杉とも縁が濃い。桂が大江戸で活動していた分、桂とのそれは薄れ、逆に高杉とは深まった感がある。
「高杉は今何処にいる?」
桂の問いに答えたのは井上の方だった。
「高杉なら鬼兵隊本隊と北陸道戦線だろ?」
流石、しゃあしゃあと答える面の皮の厚さだ。粛正されかけてなますにされても生き残っただけあって、肝は座りきっている。
「山田と山県からもそう聞いている。本当にそこだろうな?」
すぐに白状するとも思っていなかった桂は村塾出身の指揮官たちの名前を挙げて重ねて問う。攘夷戦争を戦い、粛正の嵐をやり過ごして潜伏し、桂たち同様まだ生きている者もいるのだ。
死して不朽の見込みあらば、いつでも死ぬべし
生きて大業の見込みあらば、いつでも生きるべし
先に死んだ者の無念を背負うなら生きて大業をなさねばならなかった。それが先生の教えだからだ。
数人の例外もなくもなかったが、村塾の生き残り達は、高杉の挙兵に力を尽くしている。
村塾の絆は強い。だがそればかりではない。今が生死を賭ける時だと理解したからだ。そう桂は思っていた。
「さあ? 何しろ高杉さんのすることですからねぇ」
空とぼける伊藤を見ながら思う。桂は謀られていたのだった。
(あれは元々、人望があるわけでもないのに不思議と人を従わせるところがあった)
呼びつけられた桂だとて今の今まで要望通りにしてやっているのだ。人のことを言えた義理ではないが。それにしてもと思う。
「…。そうか。では本当なんだな。高杉が雪火で北陸にはいないのは」
病に侵され後がないことを知った高杉は走り通すことを決めた。しかしそれを桂には秘していた。ただ桂一人に。
他の総督たちは知っていて、口止めをされていたのだ。
「何言ってんですか桂さん!」
「そうですよ、俺らそんなことひとっことも!」
この二人もだ。
軍内に動揺が広がるのを厭うたのだろう。だがそれにしても桂に黙っているとはどういうことだ。恐らく辰馬や銀時に漏れることを恐れたのだろう。それにしても。
「ふん。何か良からぬことを企んでいるのは知っていたが、あまり俺を甘く見るな。しらばっくれてもネタはあがっているのだ。銀時がエリザベスを通して知らせて来た」
「あー。あいつまだ生きてたのか。ふーん。しぶといなぁ」
ふつふつと怒りながら桂は情報元を公開する。すると、井上は死ねばいいのにと思っているようでそんなことを言った。どうやら井上は白夜叉とまで言われた銀時が一般人として暮らしていることを快く思っていないようだ。
「坂田さん? 大江戸の坂田さんがなんで高杉さんのそんな情報。高杉さんが雪火持ち込んだって噂はたったそうですけどストーカー? いやいやいや」
村塾出身だけあって、銀時の高杉好きといざという時のどS具合を知っている伊藤はやや腰が引けた感じだ。しかし腰が引けているもののまだ隠し通す気なのかそんなのただの根も葉もない噂ですってといい募る。
しかし彼らが共謀して高杉の方に付いたからと言って、桂に味方しない者がいない訳ではない。
「裏付も取った。俺と大村殿は仲良しこよしの仲。聞けば大概のことは答えてくれる。聞かなければ教えてくれんがな。口止めするだけ無駄だ」
二人はがくりと肩を落とした。
そっちかあああああああ! ああ、すみません高杉さん! とか言っている二人を他所に立ち上がった桂は宣言した。
「そう言う訳で俺は行くぞ。昔から奴の暴走を止めるのが俺の役目だ!」
今より政務を投げ出して参るという訳で。桂は高杉のいる東山道軍本隊のいる武州までやって来たのだった。
「また子ぉ」
高杉は一応の味方である桂に撃鉄を起こした思い切りの良い来島に声をかける。
「はい、晋助さま!」
「三十六計」
「了解っす」
来島は牽制の一発をずどんと桂の足下にぶっ放す。その間に高杉は裸足のまま庭へと降りて脱兎の如く走った。ここで桂に捕まって無為に時間を取りたくはない。全てを知った今、無理矢理薬を飲ませることは生還率を考えれば桂はきっと強要できない。それにしても問答無用で戦場から引き離されるだろう。
西郷のいる東海道軍が定めた江戸城総攻撃まで一週間を切っている。
「あっ、こら待て、高杉! 貴様走るんじゃない! まだ話が…!」
銀時とぶつかるならその日だろうと高杉は思っていた。その日まで生き延びる。高杉は桂の静止を振り切って走った。
息が切れて、目が霞む。喉が切れて、口腔の奥から血の匂いがあがってくる。慣れた不快感に、咳き込みたい衝動が、胸を圧迫した。しかしここで倒れればおしまいだ。二度と臥所から出ることが出来なくなることが高杉には分かっていた。
「晋助さま」
ふらつく高杉の手を手袋をした来島が掴んで一緒に走った。
「もうすぐ車止めっす」
「ああ」
高杉の命を掛けた願いを鬼兵隊は叶えようとした。他の諸隊の同志たちもだ。それはもう半ば以上達成されたようなものだ。幕府は終わる。誓いは果たされる。復讐は遂げられる。あとは高杉がいなくても勝手に進んで行くだろう。奪われたのは高杉一人ではない。
だから本当は高杉はもう眠ってもいいのだ。
寛容なのか同情なのか、高杉の自由にさせてくれるものたちがいても、一度倒れれば高杉の体そのものが、戦場に立ち続けることをこれ以上許さない。
今でさえ常勝の軍神と崇められている高杉の強い意思がなければ死までの静養を余儀なくされていただろう。
意思の力で立っていても、終わりの時は近い。
鬼兵隊は離れた場所から高杉を固く守っていたし、高杉よりも強い奴は現れなかった。相手になりそうな真選組も近藤が捕縛され、戦線から離脱するかもしれない。高杉はこのままでは戦場で死ぬこともできない。無様なことだ。
畳の上で死ぬなんて、死んで行った奴らに顔向けできないと思っていたが、自分のような者には逆にふさわしいのかもしれない。
華々しく散ることも出来ずに、無惨に病で倒れ…。
それでも自分が幸運だということは高杉には分かっていた。
(俺は本懐を遂げられる)
充分だ。もう。
後事を託して、腹をかっ捌き、それで自分の身の始末をつけてもよかった。道はつき、復讐も、獣の呻きももろともにそうして死へと堕ちて逝っても。
あと、思い残すことがあるとしたらそれは銀時のことだろう。
本当だったら、何も想い残すこともなかったのに。
そうだ。高杉は銀時が攘夷戦争から手を引いた後、トラブルを起こし、小さな災厄に見舞われながら、しぶとく生きていることに何の不満もなかった。
それこそが松陽の願ったことではなかったかとさえ思っていた。
銀時は死んだ魚のような目をしていつつも、なんだか楽しそうだった。多分幸福だった。
松陽を失ってから初めて得た穏やかで騒々しい時間だっただろう。自分では与えてやれない、そして自分には与えられないものだとしても、高杉は安堵していた。
似合いだった。銀時には。
白夜叉を飼い殺しながら家族のようなメガネとチャイナと銀時が根を張った街の人々といつまでもそうしていればいい。銀時は自分が守れる範囲のものを、今度こそ守るだろう。
どれほど高杉が一緒くたに破壊しようとしてもそこだけは守るだろう。そう思っていた。
(先生。先生…俺のことはいい、銀時の為にもう少しだけ時間をくれ…)
当然だがこれまで高杉は銀時に斬ってほしいと願ったことはなかった。そんなことになったら志半ばで死んでしまう。
それは向こうから言い出したことだ。あれ以上、人々に害をなす高杉のやり方を見ていられなかった銀時と桂が、高杉を止める為の最後通牒をつきつけただけだ。
そんな恫喝で止められることなら最初から誓いはしない。志がなくなれば高杉は高杉ではなくなる。なんのために生き延びたかも分からない。
平和に平穏に大過なく銀時が幸福に過ごしたいならそうすればいい。虐殺に目をつぶり、粛正を忘れて、何事もなかったように忘れ、そうした生活を優先したいならそうすればいい。だがそこに高杉の望みはない。
許さない。
天人も、天人に迎合し、攘夷志士を弾圧した政府も、それをただ受け入れた世間という奴も、全てが高杉の敵で破壊の対象だ。そう。
己の幸福も未来も命を投げ打ってでも高杉にはしなくてはならないことがあった。
(誰だって変わって行く。戦うと言ったお前が変節したように。俺は変わって俺にしかできないことをする。最期まで戦い抜く)
破壊だ。高杉は旧体制の破壊をひたすらに目指した。幕府に支配されるという常識の破壊。階級制度の破壊。天人に貪り尽くされても仕方がない社会構造を、秩序をぶっ壊す。その破壊を、優しさや、希望、他者への労りに絡めとられて他の誰も憎しみを遂行出来ないというなら高杉がする。
誰を殺し、泣かせ、犠牲にしても。全てを取っ払ってやろう。血と怨念に満ちた閉塞した世界に風穴を空けて滅ぼしてやる。たとえ、そのために全てが灰燼に帰し、更地になっても構うものか。
憎めよ銀時、こちら側に来れないなら、そう思いながら。そうしてどうしようもない奴だったと苦々しく回想し次第に忘れていけばいい。
攘夷戦争のただ中で、あるいは銀時が去った後でも、自分だけが悲嘆にくれているというように、一所に落ち着き、大事なものを作り固め、守ろうとする銀時をあざ笑いながら、高杉はあちらこちらを転々としては世界に喧嘩を売りつづけた。
それを直接見、また伝え聞いた銀時はむかついただろう。先生の教えをねじ曲げて復讐に生きる高杉に怒らないまでも、苦しんだだろう、悲しんだろうし、辛かったろうと思う。だからいっそ無視するか、憎んでいてほしかった。
それなのに。
とっくに愛想をつかされているだろうと高を括っていた。それなのにまだ銀時は高杉を諦めてはいなかった。自分のものだと思っている。
高杉は心底驚いた。顔に出さなかっただけで。
(どんだけ馬鹿なんだ)
銀時が一緒に幼少を過ごした頃の堅物で融通が利かず、死ぬほど自尊心の高いけれども屈託なく笑っていられた高杉など何処にもいない。最初から何処にもいなかったのに。
ただ高杉は多少松陽に矯正されたため、自分の醜く、汚い、目的の為なら人を虐げても構わない、真っ黒に爛れた性根をみせなかっただけだ。桂などはよく知っていたから大魔王だの獣だのと好き勝手言っていた。
死んだ後に、銀時の記憶の中でのみそれは再構築されるのだろう。
(どんだけ未練がましいんだよ。どんだけぐずぐずしてんだよ。俺だけがお前を想っていればいいことだったのに)
銀時などは高杉を憎んで、死ぬ時にザマアミロとかいえばよかったのだ。
だけどまだ、銀時は高杉を懐に入れて大切にしている。
守りたい者と守りたい者が両立しない矛盾が生じた。そんな葛藤に放り込みたい訳ではなかった。その上高杉は雪火だ。どうあってももう、この病魔から守ることなどできやしない。そんな思いをさせたいわけがなかった。何も守れないと悄然と戦場を去った銀時を虚しく見送ったからこそ。
(お前、馬鹿だなぁ銀時)
昔のものなどさっさと捨てればいい。あの戦場に桂が、辰馬が、銀時が、残して行ったもの。そういうものこそが、高杉のものなのだから。
(お前本当にどうする気なんだ?)
銀時自身、高杉を斬ることにそう乗り気でないことはもう分かっている。まだ迷ってる。
来ないなら来ないでいい。渡した刀は形見になる。手元に置かなくても幾ばくかの金になるだろう。
だがもし来るのなら。
(面倒だが仕方がねぇ)
惚れた弱みだ。銀時の為にもう少し力を尽くしてやろう。最期まで足掻いて、生きて、思い切らせてやる。近藤への嫌がらせも、錦の御旗偽造、偽りの詔勅、公武合体派の天皇暗殺、あることないこと洗いざらい吐いて気持ちよく斬らせてやる。
高杉得意の一石二鳥だ。
(うっかり俺がぶっ殺しちまうかもしれねーが。それもお前の為なのかもしれねぇ。俺にそれだけの力が残っていればの話だが)
「晋助さま!」
来島が叫んでいる。意識を飛ばしかけていた高杉は必死で片目を凝らした。
視界を過った銀髪に高杉はうっとりと微笑んだ。そのまま来島から汗ばんだ手を離し、抜き様に払う。
メロドラマになって来た。本望!
ツンデレだった。本望! 本望!
次は銀さんと多分真選組。
梅花凋落11を更新しました。
桂誕になにもしてませんが、ちょうど桂の出番だった。ほんのちょっと。次も出るかなどうかな。出るとしたら多分高杉フルボッコ。な・ん・で・す・と?
メロドラマみたいな小説が好きなので、梅花凋落も順調にメロドラマになっています。皆さん砂吐かないように頑張って!
殺伐してかっこいいまま受けの高杉も大好きなんだけど…。まあ、そうは書ききれなかったな。
あと二話くらいで終わるはずなんだけど全13話ってすげー半端。15とかの方がいくない? と思いました。ちょっと急ぐあまり詰め込みすぎた。
暑くて昼間パソコンを触れないので、書く時間がなかなか面倒です。今現在も暑いし。二階はなー。ノーパソもって移動すればいいんですよね。ほんとにね!
おっと、メールを設置しました。できれば拍手で反応をしりたいところですが借りるのが面倒です。はたしてうちの銀高の方向性はこのままでいいでしょうか。迷走しそう。
桂誕になにもしてませんが、ちょうど桂の出番だった。ほんのちょっと。次も出るかなどうかな。出るとしたら多分高杉フルボッコ。な・ん・で・す・と?
メロドラマみたいな小説が好きなので、梅花凋落も順調にメロドラマになっています。皆さん砂吐かないように頑張って!
殺伐してかっこいいまま受けの高杉も大好きなんだけど…。まあ、そうは書ききれなかったな。
あと二話くらいで終わるはずなんだけど全13話ってすげー半端。15とかの方がいくない? と思いました。ちょっと急ぐあまり詰め込みすぎた。
暑くて昼間パソコンを触れないので、書く時間がなかなか面倒です。今現在も暑いし。二階はなー。ノーパソもって移動すればいいんですよね。ほんとにね!
おっと、メールを設置しました。できれば拍手で反応をしりたいところですが借りるのが面倒です。はたしてうちの銀高の方向性はこのままでいいでしょうか。迷走しそう。